公式解説と同じ解法ではあるのですが、より素朴な発想で同じ解法に至ったので、記録しておきます。
まず、この問題の難しいところは「所持金が負となることはない」というところで、これが無ければ有名問題で、以下のようにして解けます。
\( T \) ターンかけて \( i \) から \( j \) に移動するときの利得を \( A_T [i][j] \) とします。ここで、\( A_{T_1} [i][j] \) と \( A_{T_2} [i][j] \) が各 \( i, j \) についてわかっているとします。すると、\( T_1 + T_2 \) ターンかけて \( i \) から \( j \) に移動するとき、\( T_1 \) ターン時点で \( k \) を経由する場合を各 \( k \) について考えれば良いので、\( A_{T_1 + T_2}[i][j] = \max_k \{ A_{T_1}[i][k] + A_{T_2}[k][j] \} \) と書けます。これによって、繰り返し二乗法を使って \( A_K \) を求めることができます。計算量は \( O(N^3 \log K) \) となり、\( N \leq 200 \) なので十分高速です。
では、「所持金が負となることはない」という条件を考えていきます。初期の所持金が \( W \) のとき、\( T \) ターンかけて \( i \) から \( j \) に移動することを考えます。ひとまず「所持金が負となることはない」という条件を無視して、辺の重みの累積和の推移をグラフにします。
すると、遷移後の所持金は次のように書けます。
- 途中で所持金が \( 0 \) にならない場合は \( W + A_T [i][j] \) になります
- 途中で所持金が \( 0 \) になる場合は、累積和が最小値になる頂点が最後の所持金が \( 0 \) になる頂点になることに注目します。そうすると、累積和の最小値を \( A_T [i][j] \) から引いた値を \( B_T [i][j] \) として、最終的な所持金は \( B_T [i][j] \) になります
したがって、遷移後の所持金の最大値は \( \max( W + A_T [i][j], B_T [i][j] ) \) となります。
あとは、\( A_K \) と同様に \( B_K \) が繰り返し二乗法で計算できれば OK です。\( B_{T_1} [i][j] \) と \( B_{T_2} [i][j] \) が各 \( i, j \) についてわかっているとします。\( T_1 \) ターン時点で \( k \) を経由して\( T_1 + T_2 \) ターンかけて \( i \) から \( j \) に移動するパスを考えます。
このとき \( B_{T_1 + T_2}[i][j] \) の値は
- 累積和の最小値が \( i - k \) 間にある場合、\( B_{T_1}[i][k] + A_{T_2}[k][j] \)
- 累積和の最小値が \( k - j \) 間にある場合、\( B_{T_2}[k][j] \)
になるので、\( B_{T_1 + T_2}[i][j] = \max_k(B_{T_1}[i][k] + A_{T_2}[k][j], B_{T_2}[k][j]) \) と書けます。これによって、\( A_K, B_K \) に対して同時に繰り返し二乗法を適用できることがわかりました。
#include <bits/stdc++.h>
using namespace std;
using int64 = long long;
using vvi64 = vector<vector<int64>>;
constexpr int DEBUG = 0;
template<typename T>
vector<vector<T>> Make2DVector(int d1, int d2, T default_value) {
return vector<vector<T>>(d1, vector<T>(d2, default_value));
}
template<class T> inline bool UpdateMax(T& a, T b) {
if (a < b) { a = b; return 1; } return 0;
}
int main() {
ios::sync_with_stdio(false);
cin.tie(0);
int n, m;
cin >> n >> m;
int64 initial_score;
cin >> initial_score;
int s;
cin >> s;
s--;
int64 k;
cin >> k;
constexpr int64 INVALID = -1E18;
auto a = Make2DVector<int64>(n, n, INVALID);
auto b = Make2DVector<int64>(n, n, INVALID);
for (int i = 0; i < m; i++) {
int from;
int to;
int64 w;
cin >> from >> to >> w;
from--;
to--;
a[from][to] = w;
b[from][to] = max(w, 0LL);
}
// Computes A_{T_1 + T_2} and B_{T_1 + T_2} from
// A_{T_1}, B_{T_1}, A_{T_2} and B{T_2}.
auto merge_fn = [&](
const vvi64& a1, const vvi64& b1,
const vvi64& a2, const vvi64& b2) -> tuple<vvi64, vvi64> {
auto a = Make2DVector<int64>(n, n, INVALID);
auto b = Make2DVector<int64>(n, n, INVALID);
for (int i = 0; i < n; i++) {
for (int j = 0; j < n; j++) {
for (int k = 0; k < n; k++) {
if (a1[i][k] == INVALID) continue;
if (a2[k][j] == INVALID) continue;
UpdateMax(a[i][j], a1[i][k] + a2[k][j]);
UpdateMax(b[i][j], b1[i][k] + a2[k][j]);
UpdateMax(b[i][j], b2[k][j]);
}
}
}
return make_tuple(a, b);
};
// Computes A_p and B_p from A and B by doubling.
function<tuple<vvi64, vvi64>(const vvi64&, const vvi64&, int64)>
power_fn =
[&](const vvi64& a1, const vvi64& b1, int64 p)
-> tuple<vvi64, vvi64> {
if (p == 1) return make_tuple(a1, b1);
vector<vector<int64>> a2, b2;
tie(a2, b2) = power_fn(a1, b1, p / 2);
tie(a2, b2) = merge_fn(a2, b2, a2, b2);
if (p % 2 == 1) {
tie(a2, b2) = merge_fn(a2, b2, a1, b1);
}
return make_tuple(a2, b2);
};
vector<vector<int64>> ap, bp;
tie(ap, bp) = power_fn(a, b, k);
int64 ans = -1;
for (int t = 0; t < n; t++) {
if (ap[s][t] == INVALID) continue;
UpdateMax(ans, initial_score + ap[s][t]);
UpdateMax(ans, bp[s][t]);
}
cout << ans << endl;
}